今日の一言:人間万事塞翁が馬

今週の株式投資R4.2.21-25 引き続きウクライナ情勢

東京ロイター

[東京 21日 ロイター] – 今週の東京株式市場は、神経質な展開が想定されている。ウクライナ情勢を巡る不透明感は依然として根強く、関連報道に一喜一憂する展開が続きそうだ。ただ、需給面では「売り飽き」の兆しもみられるといい、2万7000円台での値固めへの期待も出ている。

日経平均の予想レンジは2万6500円―2万7500円。

ウクライナ情勢の緊迫化を受けて、金融市場は強弱入り交じる関連報道に一喜一憂する展開が続いている。先週の序盤は地政学リスクと米金融引き締め加速への警戒感が重しとなって急落で始まったが、ロシア部隊の一部撤退が伝わると株価は急反発した。その後、米国やNATOからロシア軍撤退は未確認との認識が伝わって、再び上値が重くなるなど、荒い値動きを繰り返した。

米国務長官とロシア外相の会談見通しが伝わった週末の東京市場では、ひとまず落ち着きを見せたものの、バイデン米大統領は18日、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を決断したと言明。外交の余地は残されているものの、市場からは「どっちに転ぶか視界が利かなすぎる」(国内証券)と困惑の声が聞かれる。

ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「軍事衝突に発展しないとの見方もあれば、北京オリンピック閉幕と同時に侵攻するとの見方もあり、投資家は何を信じていいかわからない状態」と分析する。

一方、需給面では明るい兆しを指摘する声もある。東証1部の売買代金は18日までの3営業日連続で3兆円を下回っていることから、1月安値(2万6044円52銭=1月27日)に対する「2番底探りの展開になっている」と、みずほ証券の中村克彦マーケットストラテジストは指摘する。テクニカル・需給的には、2番底の商いは1番底に比べて薄くなる傾向があるという。ウクライナ関連報道で相場が弱くなる場面では、1月安値を割り込まないかが焦点になりそうだ。

主なスケジュールでは、25日に米国でPCEコアデフレータの公表を控えている。21日の米国株式市場は大統領の日、23日の東京株式市場は天皇誕生日に伴い、それぞれ休場となる。

R4.2.21

[東京 21日 ロイター] – 東京株式市場で、日経平均は前営業日比211円20銭安の2万6910円87銭と、3日続落で取引を終えた。前週末の米株安や、ウクライナ情勢の緊迫化に対する警戒感が強まった。米ロ首脳会談の可能性が伝わって一時、株価が急速に下げ幅を縮小したが、先行きの不透明感は根強く、午後には持ち直しの勢いが鈍った。朝方の日経平均は、前営業日比350円安で寄り付いた後も下げ幅を拡大し、一時573円07銭安の2万6549円00銭に下落した。前週末の米株安に加え、ウクライナ国境付近の新たな地域にロシアが装甲車や部隊を配備する動きなどが伝わり、相場の重しとなった。午前の取引時間中に、米バイデン大統領とロシアのプーチン大統領の会談について、
外相会談後の実施を原則的に受け入れたとするホワイトハウスの発表が伝わると、日経平均は急速に下げ幅を縮め、123円60銭安の2万6998円47銭に持ち直した。時間外取引の米株先物がプラス圏に浮上したほか、為替はドル高/円安に傾いた。ただ、株価の持ち直しは勢いが続かず、午後には小動きとなった。市場では「米ロ首脳会談の話は悪くはないが、現時点では過度な期待もできない。企業決算が出そろって新規の材料に乏しい中では、外部環境の落ち着きを待つしかない」(証券ジャパンの大谷正之投資情報部部長)との声が聞かれた。

TOPIXは0.71%安の1910.68ポイントで取引を終了。東証1部の売買代金は2兆3068億0500万円で、昨年12月30日以来の低水準となった。東証33業種では、金属製品、海運業、陸運業など29業種が下落した。上昇したのは鉄鋼、銀行業、情報・通信業など4業種。東京エレクトロン<8035.T>や信越化学工業<4063.T>、アドバンテスト<6857.T>といった半導体関連株が軟調だったほか、シャープ<6753.T>や住友重機械工業<6302.T>もさえなかった。一方、NTTデータ<9613.T>、ネクソン<3659.T>はしっかりだった。東証1部の騰落数は、値上がりが621銘柄(28%)、値下がりは1466銘柄(67%)、変わらずは95銘柄(4%)だった。1183

R4.2.22

[東京 22日 ロイター] – 東京株式市場で日経平均は前営業日比461円26銭安の2万6449円61銭と、4日続落で取引を終えた。ウクライナ情勢の一段の緊迫化を受け、リスク回避の売りが広がり、一時600円を超す下げとなった。翌日が天皇誕生日で休場となるため、手仕舞い売りも加速した。ロシアのプーチン大統領は21日にテレビ演説し、ウクライナ東部の親ロシア派2地域の独立を承認すると表明、平和維持軍を派遣するよう国防省に指示した。欧米からは非難声明や制裁措置へ向けた動きが伝わっており、ウクライナを巡る情勢は一段と緊迫化している。

日経平均は395円安と大幅続落で寄り付いた後も下げ幅を拡大し、後場に667円14銭安の2万6243円73銭で安値をつける場面があった。為替市場でのドル安/円高傾向に加え、時間外取引での米主要株価3指数の下落、香港ハンセン指数などのアジア株も大幅安となり、世界的なリスクオフムードに押される格好となった。TOPIXは1.55%安の1881.08ポイント。東証1部の売買代金は2兆7093億6100万円だった。東証33業種では、海運業、ゴム製品、ガラス・土石製品
、保険業、輸送用機器などの30業種が値下がり。値上がり業種は鉱業、医薬品、電気・ガス業にとどまった。市場では、スタグフレーションを警戒する声が聞かれる。松井証券の窪田朋一郎投資メディア部長は「ウクライナ情勢の長期化で、エネルギー価格の高止まりが懸念される。物価上昇による景気減速懸念がある中で米国が金融引き締めへ動くと、株はもたない」との見方を示した。

個別では、東京エレクトロン<8035.T>、ファーストリテイリング<9983.T>、アドバンテスト<6857.T>、キッコーマン<2801.T>、京セラ<6971.T>、TDK<6762.T>が軟調。リクルートホールディングス<6098.T>、トレンドマイクロ<4704.T>は上昇した。そのほか、第一三共<4568.T>は大幅続伸し9.55%高。英アストラゼネカとのHER2低発現の乳がん患者を対象にした「トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)」の第3相臨床試験で、主要評価項目を達成したと21日に発表し、手掛かりとなっている。東証1部の騰落数は、値上がりが290銘柄(13%)、値下がりは1815銘柄(
83%)、変わらずは77銘柄(3%)だった。1151

R4.2.23 天皇誕生日

R4.2.24

[東京 24日 ロイター] – 東京株式市場で、日経平均は前営業日比478円79銭安の2万5970円82銭と、5日続落した。ロシアによるウクライナ東部への攻撃開始が報じられるなど、ウクライナを巡る情勢が一段と緊迫化した。日経平均は一時600円超安となり、2020年11月以来、1年3月ぶりの低水準に下落した。日経平均は朝方に続落で寄り付いた後も、下げ幅を拡大した。午前中は「ロシアが夜明けまでにウクライナに侵攻すると確信」とブリンケン米国務長官が語ったと報じられ、
米株価主要3指数の先物がマイナス圏で下げ幅を拡大する中、日本株は軟調に推移した。昼休み時間中にロシアのプーチン大統領がウクライナ東部での特別軍事活動を容認すると発表し、日経平均は先物主導で心理的節目2万6000円を割り込んだ。その後も下げを拡大し、後場には一時、前営業日比673円97銭安の2万5775円64銭の安値をつける場面があった。

 大引けにかけては、ウクライナ東部の部隊や軍司令部、飛行場がロシアから砲撃を受けたことなどが伝わったが、日経平均は下げ渋る動きとなった。市場では、米株先物の動きに比べると日本株の下落率は小さかったとして「日本株だけが売り叩かれる状況ではなくなってきている」(水戸証券の酒井一チーフファンドマネージャー)との見方が聞かれた。「(日本株は)米国株安に連れざるを得ない面があり、不安定な状況は続くだろう。ただ、バリュエーションに着目すれば、売り崩すのも難しくなってきていそうだ。買い下がるスタンスでいいのではないか」(酒井氏)との声が出ていた。TOPIXは1.25%安の1857.58ポイントで取引を終了。東証1部の売買代金は3兆6281億0300万円だった。東証33業種では、値下がりは空運業やゴム製品、ガラス・土石製品など28業種だった。値上がりは鉱業や石油・石炭製品、電気・ガス業など5業種だった。
 ファーストリテイリング<9983.T>、ソフトバンクグループ<9984.T>、ファナック<695 4.T>などが下げた一方、東京エレクトロン<8035.T>、バンダイナムコホールディングス<7 832.T>、リクルートホールディングス<6098.T>はしっかりとなり、日経平均を構成する主力株はまちまちの動きだった。INPEX<1605.T>や住友金属鉱山<5713.T>、コスモエネルギーホールディングス<5 021.T>などが買われたほか、ノーリツ鋼機<7744.T>は、保有するJMDC株式の売却の発表が好感されストップ高となった。
東証1部の騰落数は、値上がりが824銘柄(37%)、値下がりは1294銘柄(59%)、変わらずは64銘柄(2%)だった。1146

R4.2.25

[東京 25日 ロイター] – 東京株式市場で日経平均は前営業日比505円68銭高の2万6476円50銭と、6営業日ぶりに反発した。前日の米国株式市場でナスダック総合が3%超高と大幅高となった流れを受け、東京市場でもハイテク株を中心としたグロース(成長)株を買い戻す動きが加速した。日経平均は、朝方に反発して始まった後も上げ幅を拡大し、大引け間際で510円78銭高の2万6481円60銭で高値を付ける場面があった。日経平均は前日までの5営業日で1489円下落したため、自律反発狙いの買いが優勢となった。業種別では、このところ売られていたグロース株のほか、自動車株や空運株を買い戻す動きも目立った。ウクライナ情勢を巡る不透明感は依然として強いものの、市場では「遠くの戦争は買い。近くの戦争は売り」との相場格言が意識される様子があった。「ユーロ圏での問題とみなされ、対岸の火事とみる投資家が多いようだ。アジアなどの市場も落ち着きを見せている」(国内証券)という。市場の目線は再び米金融政策へ向いており、来週の米連邦準備理事会(FRB)パウエル議長の議会証言は特に注目度が高いという。

フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は「ウクライナ情勢の緊迫化を受け、原油高や供給制約による景気悪化が懸念されている。パウエル議長の発言がよりクローズアップされるだろう」との見方を示した。TOPIXは1.00%高の1876.24ポイント。東証1部の売買代金は3兆1752億7500万円だった。東証33業種では、海運業、電気機器、空運業、機械、卸売業などの20業種が値上がり。鉱業、保険業、銀行業などの13業種は値下がりした。個別では、東京エレクトロン<8035.T>、アドバンテスト<6857.T>、ソフトバンクグループ<9984.T>、ファナック<6954.T>、ファーストリテイリング<9983.T>がしっかり。半面、KDDI<9433.T>、セブン&アイ・ホールディングス<3382.T>、東京海上ホールディングス<8766.T>は売られた。

原油価格の上昇を受けて前日までに急騰したINPEX<1605.T>、石油資源開発<1662.T>などの石油関連株は利益確定売りに押され、ともに6%超安となった。東証1部の騰落数は、値上がりが1325銘柄(60%)、値下がりは779銘柄(35%)、変わらずは76銘柄(3%)だった。1136

来週は・・・

[東京 25日 ロイター] – 来週の東京株式市場は不安定な展開が予想される。ウクライナを巡る地政学リスクの高まりに加え、3月米連邦公開市場委員会(FOMC)が近づく中で、米金融引き締め加速への警戒感も、相場のかく乱要因として改めて意識されそうだ。

日経平均の予想レンジは2万5900─2万6900円。

日経平均の株価収益率(PER)は、24日時点で12倍台に低下している。直近の12倍台は、昨年の安値をつけた8月半ばから下旬の局面や、年初の安値だった1月27日しかなく「2万6000円が下値と意識されやすい」(野村証券の澤田麻希ストラテジスト)という。

ただ、ウクライナを巡っては、国内での戦闘状況のほか、各国による制裁の動きが流動的で、関連報道次第では相場が動意づきかねないとみられている。加えて、米金融引き締めへの警戒感もくすぶっている。「地政学リスクが落ち着いてくればその分の買い戻しは早そうだが、ある程度、先行きが見通せるまで買い上がるのは難しそうだ」(澤田氏)という。

金融市場にとって地政学リスクは、短期的なインパクトにとどまるのが通例とされるが、今回のウクライナを巡るリスクの高まりは、各国中銀が金融引き締めに向かう局面で生じており、そのことが事態を複雑にしている。

株式市場にとって、地政学リスクは米金融政策にポジティブとネガティブの両側面からの影響が警戒されている。ネガティブな側面は、原油など資源価格の上昇が促されてインフレ高進を招き、金融引き締めが加速しかねないとの見立てだ。

WTI<CLc1>原油先物は節目の1バレルあたり100ドルをいったん上回った後、足元では伸び悩んでいる。ただ「ロシアの侵攻が継続する間は、原油価格の上昇圧力はくすぶり続ける」(国内証券)との見方は多い。

一方、地政学リスクが世界経済に与える影響を米連邦準備理事会(FRB)が考慮し、引き締めペースが緩やかになれば株価にポジティブとの思惑もある。

クリーブランド地区連銀のメスター総裁は24日、「米国の中期的な経済見通しに与える影響も、緩和策の適切な縮小ペースを決定する上で考慮される」と指摘した。ただ、リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は、利上げ方針の背景となる論理的裏付けを変えることはないとの見解を示しており、FRB高官の間でも見方は割れているようだ。

この週には、FRB議長が2─3日に議会証言するほか、複数の連銀総裁の講演が相次ぐ見通しとなっており、政策スタンスに変化がないかヒントを探ることになる。週末の4日に控える2月米雇用統計や、ISM製造業景況指数(1日)、同非製造業景況指数(3日)への注目度も高まりそうだ。